豊田陽平の鳥栖愛。「トーレスの控え」のクローザーとして仲間を思う (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Yamazoe Toshio

「鳥栖は降格するようなチームではないですよ。せっかく自分たちでJ1に上げたチーム。外にいて、J2に落ちる姿は絶対に見たくなかった」

 豊田はその一念で戻ってきた。

 しかし苦難に喘ぐチームで、エースは脇役を演じざるを得ない状況に置かれている。クラブはFWとしてトーレスだけでなく、鹿島から元日本代表の金崎夢生も獲得。豊田はトレーニングに真剣に打ち込み、プロフェッショナリズムを見せることでしか貢献できなかった。当時のマッシモ・フィッカデンティ監督は「豊田はトーレスの控え」と頑なで、他の選択肢を持たなかったのだ。

 結局、豊田は8試合に出場したものの、すべてが途中出場。ゴールはひとつもない。

「自分は鳥栖というチームで、他の選手が点を取らせてくれたと思っているので......」

 豊田はもどかしさを隠して言う。

「豊田シフトを敷いてくれていたんだと思いますよ、自分中心のチームで。だから、ゴールすることは自分の仕事でした。ゴールすることでチームを引っ張れたし、みんなに恩を返せていたんです」

 たとえゴールすることができなくなっても、豊田は求められた役割を忠実にこなした。仲間を思い、力を出し尽くす。それが鳥栖のスピリットだからだ。

「クラブは大きくなっていくべきなんでしょうけど、鳥栖らしさみたいなのは残していってほしいですね。ピッチに立てない自分の影響力が少なくなっているのは、もどかしいですけど。鳥栖が好きで、自分はこのクラブでやってきたから」

 豊田は鳥栖への愛情を吐露している。

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