再びJ1残留争いを戦った磐田・山田大記は「涙が出そうになった」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Naoki Morita/AFLO SPORT

 序盤、磐田はビルドアップを試みる東京Vに積極的なプレスをかけ、勢いを消している。主導権を握りながらも得点はできない時間が続いたが、腰は引けなかった。そして前半41分、冒頭に記したPKを小川が決め、先制した。引き分けでも勝ち上がれる条件だけに、一気に優位に立った。

 その後は悪い流れの時間帯もあったが、後半35分に田口泰士がFKを鮮やかに叩き込み、勝負を決した。

「(田口)泰士の2点目が決まって、ようやく勝利を確信しましたね。それまでは押し込まれる時間帯もあったので。でも、自分が試されているようで、状況を楽しんでいるようなところがありました」

 山田は饒舌だった。

「自分はドイツ(カールスルーエ)でプレーし、入れ替え戦も経験しています。アウェーに乗り込んだ時、相手サポーターに殺されるんじゃないか、というプレッシャーも受けました。そういう経験を経た自分が、この状況で硬くなってしまうのか、成長を感じられるのか、それを確かめる余裕がありました。結果は大事だけど、プロセスにフォーカスし、悔いのない戦いをしようと」

 その余裕のせいか、2-0で勝利して残留が決まっても、涙は出てこなかった。

「泣くかなと思ったんですが、安堵に近くて。それよりも、(第28節に)湘南に勝った後の方が、涙が出てきそうでした。『まだシーズンが残っている』ってどうにか堪えたんですが。湘南戦は守りに入らず、前から行くというプレーができた。その後に広島を相手に0-2からひっくり返し、このチームなら残留できるはず、という確信が生まれた。最終節で川崎に逆転負けしましたけど、周りが言うように失速していたわけではなかったです」

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