転換期のJリーグ。福田正博はクラブの「哲学」と「継続」を評価 (3ページ目)

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro photo by AFLO

 今シーズン、その代表格だったのがサンフレッチェ広島とFC東京だろう。前者はパトリック、後者はディエゴ・オリベイラが得点を決め、守備は全員で組織として守る戦い方に徹した。シーズン前半戦はそれがハマって上位に躍進したが、そこを分析されて抑えられると得点を決められなくなって勝ち点を伸ばせなかった。

 優勝した川崎のサッカーは、相手に分析されて誰かひとりを抑えられたとしてもほかの選手が得点を決めて、そのスタイルを変えることなく安定して勝ち点を積み上げた。これは他クラブと同じような予算のなかで、川崎が"クラブ哲学"に基づいて、時間をかけてチームを作り上げてきたアドバンテージと言える。

 低予算のチームのなかで、湘南ベルマーレは評価されるべきチームのひとつだ。今季はルヴァンカップを制覇し、リーグ戦は14位と残留争いを戦い抜いて踏みとどまった。毎年シーズン後に主力選手を引き抜かれていることを考えれば、チョウ・キジェ監督のもとでよく戦っている。豊富な運動量が代名詞だが、チョウ監督はボールを奪ったら単に走るだけではなく、ボールを保持して時間を作るべきときは作るスタイルへ進化させている。引き続きチョウ監督のもとで湘南は来季もブレない戦い方を見せてくれると信じている。

 今季、各クラブの順位はめまぐるしく変わったが、順位変動は、監督の手腕によるところが大きいとも言える。その象徴的な存在がガンバ大阪だった。

 G大阪は開幕から育成に定評があるレビー・クルピ前監督にチームを託し、若手への世代交代を図ったが、4勝3分10敗で16位に低迷。後半戦から宮本恒靖監督が引き継ぐと、8月末の時点では最下位に沈んだものの、9月からは9連勝を記録して最終的に9位。劇的にチームを蘇らせた手腕が光った。

 就任直後は若手も起用しながら再建を試みたが、最終的に残留争いから一気に抜け出した要因は、遠藤保仁と今野泰幸だった。今野がボールを回収し、遠藤がゲームを組み立てる。ふたりが揃えば、1+1は3にも4にもなることがあらためて証明されたし、"残留"という課題に対して宮本監督の出した成果は評価されるべきものだろう。

 ただし、来シーズンを見据えた場合、来年1月で遠藤は39歳、今野は36歳になる。ふたりの存在の大きさは誰もが認めるところだが、年齢を考えれば一年を通じて好調を維持することは難しい。そのため、来季は否応なく"世代交代"を意識せざるをえないはずだ。しかも、今季終盤に9連勝したことで期待感は高くなっており、その分プレッシャーは増大する。さらに、シーズン途中から指揮を執るのと、開幕前からチームを作り上げるのでは、監督として仕事の内容は異なる。宮本監督がチームをどう作り上げていくのか興味深いが、その困難を乗り越えて、次の時代につながる"新生・ガンバ大阪"を築いてくれるのではないかと期待している。

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