天皇杯優勝が示すレッズの勝負強さ。
だが、その強さは完全ではない

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 オリヴェイラ監督が今季途中に就任し、第10節から指揮を執った浦和は、その直後こそ、思うような結果を出せなかった。だが、ワールドカップ開催にともなう中断期間中に、静岡で1週間ほどのトレーニングキャンプを行なったことで状況が好転。ハードなメニューを課すことで、「フィジカル的なところを向上させるだけでなく、戦術的なところも浸透させた」(オリヴェイラ監督)というチームは、中断明けの第16節以降、10勝5敗4分けと巻き返した(第15節までは4勝6敗5分け)。

 鹿島で監督を務めた時代には、J1で3連覇を成し遂げたブラジル人指揮官が、「まずはモチベーションを上げることが必要だった。選手が、練習に対する姿勢は、少し意欲が低下していると感じた。無気力な姿があったし、後半になるとパフォーマンスが落ちる試合が多かった」と振り返ったチームは、シーズン後半、徐々に成績を回復させていった。今季J1では、開幕戦から5戦勝ちなし(3敗2分け)のスタートだったことを思えば、最悪の事態は脱したのだろう。

 しかしながら、J1のラスト5戦では、1試合ごとに勝ちと負けを繰り返すなど成績は安定せず、強さは完全なものとはなっていない。優勝した天皇杯でも、その試合内容はすでに記したとおりだ。

「選手に自信をつけさせ、意欲的な姿勢にさせることが重要だった」(オリヴェイラ監督)という浦和にとって、12シーズンぶりに天皇杯を制覇したことは、"勝ちグセをつける"という意味で非常に高い価値を持つ。実際、自信にもなっただろう。

 だが、2006年以来、J1優勝から遠ざかる浦和の真価が問われるのはこれからだ。

 喜んでばかりはいられない。

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