組織力だけでは限界だったベガルタ。
タイトル獲得へ本気度が試される

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 左サイドで果敢な仕掛けを見せた中野嘉大(よしひろ)は、深い位置まで侵入することはできたが、質の高いクロスは供給できなかった。

 最多5本のシュートを放ち、運動量や球際の強さも示した野津田は、この日唯一の決定機と言えた72分の場面で、ヘディングシュートを枠に収めることができなかった。

 前日に観たジュビロ磐田と東京ヴェルディとのJ1参入プレーオフでも感じたことだが、サッカーはチームスポーツである一方で、個々が局面の争いでしのぎを削り、技術やアイデアを発揮する個人のスポーツでもあるだろう。仙台と東京V――両チームが目的を達成できなかったのは、極論すれば個人の力量によるところが大きかった。

 もちろん、たしかな組織を築いた東京Vのロティーナ監督、そして渡邉監督の手腕は称賛されるもので、そのスタイルを体現した選手たちも同じく称えられるべきだろう。一方で、いい戦いを実現しながら結果につなげられなかった両指揮官のジレンマも浮かび上がる。

「伸びています、間違いなく。選手も、チームも、すごく成長しているし、やれることは増えてきている。とくに今日のゲームは、やっている選手も楽しかったと思います」

 就任から5年、渡邉監督はチームの成長にたしかな手ごたえを掴んでいる。しかし、タイトルには届かなかった。では、仙台がタイトルを獲るためには何が必要か。

 それは、もはや監督力の範疇には収まらないものなのかもしれない。悲願のタイトル獲得へ――。クラブの本気度が試されている。

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