J1昇格はならず。ロティーナ体制の東京Vが貫いた自らのスタイル (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 一方で攻撃でも、丁寧なビルドアップから相手の守備に揺さぶりをかけ、粘り強くパスをつないで得点機を探った。この磐田戦でもそのスタイルはブレることなく、たとえビハインドを負ってもパワープレーに逃げることはなかった。あくまで自らのスタイルを貫いて、J1の扉をこじ開けようとしていたのだ。

 ただし、そのスタイルが結果的に磐田の戦いを楽にさせてしまったのも事実だろう。磐田のハイプレッシャーをかいくぐれずに、危険な位置でボールを失うシーンが頻発する。

「もう少しボールを持ちたかったですが、それを出させないように相手もやってきました。そうなった時に、自分たちももっと違う手を打っていく必要があったと思います」(井上)

 実際にシーズン中の東京Vは、相手のハイプレッシャーを逆手に取り、1本のフィードからカウンターを狙う戦いも実践していた。しかし、この日はスタイルに固執するあまり、柔軟性を欠いてしまったことは否めない。そうした状況に応じた判断の質が、J1に到達できなかった原因のひとつになってしまった。

「昇格を逃してしまって残念だという気持ちはありますけど、選手たちの1年間の仕事というのには満足しています」

 そう選手を称えたロティーナ監督は、試合翌日、参謀のイバン・コーチとともに退任を発表している。

 ロティーナ監督が指揮を取った2年間は、J2での戦いを強いられてきたこの10年間で、もっともJ1に近づいた時期でもある。ポジショニングのディティールに徹底的にこだわり、リスクを極力回避しながら、ボールを大事にするサッカーを実現。就任当初は、スペインでは子どものうちに身につけているはずのことを、選手たちにイチから教えることもあったという。ロティーナ監督のもとで、東京Vはひとつのカラーを色濃くし、着実にJ1への道のりを歩んでいった。

 しかし、濃密な2年間は目標に到達できないまま終焉を迎えた。焦点は後任人事だろう。ロティーナ路線を継続するのか、イチから土台を構築するのか――。名門復活を目指す東京Vは、J1の舞台に迫りながら、その岐路に立たされることとなった。

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