J1昇格はならず。ロティーナ体制の東京Vが貫いた自らのスタイル (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

「個人個人の能力の差はありましたし、そのなかで自分たちの組織力であったり、2年間積み上げてきたもので勝負しようと思いましたけど、それも正直出せなかった」(井上潮音)

「このプレッシャーに慣れているかどうか。うちには慣れていない選手が何人かいたと思う」(佐藤優平)

 それでも、東京Vは個の力で劣りながらも、ロティーナ監督のもとで培ってきた組織力で対抗を試みた。攻撃でも守備でもいいポジショニングを保ち、複数の連動によって個の力を補った。

 しかし、シーズン中、あるいはプレーオフの2試合で実践できていたそのプレーが、J1チームを相手にはなかなか表現できなかった。攻撃ではハイプレスに苦しんでビルドアップがままならず、守備では相手のスピードについていけず、裏を取られる場面も目立った。

 そして何より痛かったのは、前半終了間際にPKを与えてしまったこと。この場面でも裏を取られたことが原因だったが、ただでさえディスアドバンテージがあるうえに、先制点まで奪われてしまっては、苦しくなるのは当然だった。

「ゼロで抑えることは絶対だった。プレーオフの2試合ではそれができていたけど、できなかったことで苦しくなった。与えてはいけないPKだった」(佐藤)

 後半は、東京Vのボールを持つ時間が増えたが、余裕を持った磐田の守備を崩しきるには至らず。途中から守備の人数を削り、攻撃の枚数を増やしたロティーナ監督の策も、好転に導く要素とはなり得なかった。

 そして80分にフリーキックから2点目を奪われると、「ほぼ可能性がなくなった」(ロティーナ監督)。J2の6位から這い上がってきた東京VのJ1昇格の夢は、実力上位の磐田によって、あっさりと打ち砕かれた。

 それでも、プレーオフの3試合を含め、東京Vの今季の戦いが否定されるものではないだろう。リーグ2位の41失点という堅守を武器に、2年連続でプレーオフに進出。プレーオフの1回戦では数的不利を跳ね返し大宮アルディージャに勝利を収めると、2回戦では終了間際の一撃で横浜FCを撃破した。スコアはともに1−0。強固な守備組織が崩れることはなく、"下剋上"を繰り返した。

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