J1参入プレーオフを読み解く。磐田優位もスペインの名将は不敵に笑う (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Masashi Hara/Getty Images

「チームとして、反発力を出せるカードはベンチに残しておく。流れはどこかで曲がるからね」
 
 ロティーナは不敵に言う。戦力的には不利ななかで、どうやって戦うべきか――。老練なスペイン人指揮官は知り尽くしている。たとえば、ブラジル人FWレアンドロは、限られた時間ならJ1のDFを脅かすだけのプレーをするはずだ。

 磐田が勝負をものにする最善の策は、序盤から力の差を見せつけ、圧倒し、先制点を奪うことにあるだろう。その点、Jリーグ歴代最多得点のFW大久保の決定力はものを言う。ひとりひとりの技術、体力は一枚も二枚も上だ。むしろ守りに入ったら、重圧を感じるのは彼らの方だろう。

 もっとも、策士ロティーナはその程度の戦いの流れは見抜いているに違いない。相手が前に押し出してくるなら、背後を狙うのが今度は常套手段になる。ポテンシャルの高さではU-21代表年代でも屈指のMF井上潮音が、決戦で覚醒するのか。ロティーナはあらゆる算段を整えているはずだ。

 磐田の優位は動かない。先制点を決めれば、心理的にも優位に立てる。強気の攻めがはまれば、大差での勝利もあり得るだろう。

 しかし0-0で推移した場合、ロティーナは策を巡らし、東京Vの選手たちは心理的に上に立つ。挑戦者である彼らは、2試合続けて終盤に劣勢をひっくり返しているのだ。

 ヒリヒリした空気が肌を焦がす。勝者として痺れを感じるのは、ジュビロ磐田か、東京ヴェルディか――。

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