羨望の布陣。ビジャ加入が神戸にもたらす絶大な効果 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by KYODO

 あえて言えば、Jリーグ特有のテンポが速いプレーに適応するのに時間が必要だろう。タメを作り、タイミングを計るプレーに慣れたスペイン人にとって、Jのスピード感覚はどうしてもせわしなく、違和感となる。

 当然だが、言葉の壁という問題も出てくるだろう。いくら優れた通訳がいても、すぐに自分の思いを伝えられず、相手の意をくみ取れないのはストレスになる。意思疎通の面では、若干の混乱があるはずだ。

 しかし、ビジャはこれまで所属した各クラブで結果を残し、適応力の高さを売りにしている。繰り返すが、どんな戦術、布陣も苦手としない。ましてリージョ、イニエスタという理解者がピッチ内外にいるのだから、その点のノッキングはないだろう。コーチングスタッフもスペイン人で固められているだけに、生活面も孤立するようなことはない。オーストラリア、アメリカという国々でプレーしてきた海外経験も、プラス要素だ。

 一方でビジャの加入によって、日本人FWはポジションを明け渡すことになる。ただ、チーム全体としては、競争力が生まれ、好転するだろう。ビジャほどの選手をライバルにして、日々切磋琢磨できるような恵まれた環境はめったにない。

 チームプレーヤーであるビジャは、必ず周りの選手のプレーも改善させるはずだ。パサーやクロッサーの潜在能力を引き出すことになるだろう。ビジャの神戸入団は、単なる一ストライカーの加入にとどまらない波及効果があるはずだ。

 イニエスタ、ポドルスキ、そしてビジャ。神戸には3人の世界王者が顔を揃えることになった。戴冠への手はずは着々と整いつつある。
 

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