神戸入りするビジャの実像。炭鉱の町で育った仲間思いのストライカー (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by KYODO

 17歳で、ようやくスポルティング・ヒホンのユースに入団し、そこからめきめきと頭角を現した。

「ダビドは試合に負けて泣いたことはない。いつも怒っていたよ。ゴールを外してもそうだ。とても機嫌が悪くなった。あいつにとってはゴールをして勝つことが、人生そのものなんだよ」

 ビジャの父は、懐かしそうな表情を浮かべて語っていた。

 炭鉱の町で培った人生が、今も彼を支えているのか。ビジャは謙虚だが、闘志に溢れ、チームのために生死を懸けたような真剣さで勝負を挑める。献身的に守備をし、味方のためにスペースを作る動きも厭わない。味方にしたら、頼もしい男だ。

「なにごとも、まずは信じることが必要だ。サッカーは単純さ。能力のある選手が一丸になれば、当然、タイトルも狙える」

 ビジャはあっけらかんと言う。幼い頃からその精神を貫いて、栄光を勝ち取ってきた自負があるのだろう。

 37歳になるが、ビジャは今も世界有数のストライカーのひとりである。2016年度はメジャーリーグサッカーの年間MVPを受賞。2017年はシーズン24得点を叩き出し、9月には35歳にしてスペイン代表にも一度、復帰している。

「僕はチームのため、すべての力を捧げるだけだ。そうやって生きてきた。それしかできないんだよ」

 ビジャは硬骨に言う。

 2019年シーズン、ファン・マヌエル(ファンマ)・リージョ監督が率いる神戸は、かつてないほど優勝というタイトルに近づいたと言えるかもしれない。

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