悲劇的な結末を迎えたジュビロ磐田。J1残留のために必要なことは何か (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 にもかかわらず、悲劇は起きた。

「いつもなら間合いを取って対応できたが、反応が遅くなって少し焦ってしまい、飛び込んで(かわされて)しまった」

 悔しそうに語るDF大南拓磨が、MF家長昭博にドリブル突破からのクロスを許すと、ボールは相手FWと体を並べるようにゴール前に滑り込んできた大井の足先に当たり、無情にも磐田ゴールに転がり込んだ。

 まさかの16位転落に、名波監督もさすがに落胆の色を隠せなかった。開口一番、「この敗戦のあと、話ができるほど人間ができていない」と言うと、「残酷なこの結果を受け止めるのに精一杯」と胸の内を明かした。

 いつもはどんな結果になろうと、落ち着いて試合を振り返る大井も、自らのオウンゴールで試合が決したとあって、この日ばかりは無言でバスへ。足早に立ち去る様子がショックの大きさを物語っていた。

 とはいえ、磐田はJ2降格が決まったわけではない。

 昨季までなら16位は、17、18位の2クラブとともに自動降格だったが、今季から規定が変わり、"幸いにもプレーオフを戦える"のだ。

 しかも、J1のラスト1枠を争う決戦は、磐田のホームゲームで行なわれ、磐田は勝てばもちろん、引き分けでも残留が決まる。条件はかなり有利なのだ。

 だからこそ、怖いのは「残留を決められなかった」というショックを残したまま、大一番に臨むことだろう。

 対戦相手の東京ヴェルディは、J2の6位からリーグ戦上位の相手を連破し、勢いに乗って磐田に挑んでくる。それだけに、「気持ちが落ちたらよくない。プレーオフがあってラッキー、くらいの気持ちで、前向きにやるしかない」(大南)。いい意味で開き直る余裕が必要だ。

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