プレーオフでこそ生きる、東京ヴェルディの「0-0のメンタリティ」 (2ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Masashi Hara/Getty Images

 J1参入プレーオフでは、90分間の試合を終えて同点の場合、延長戦やPK戦は行なわれず、リーグ戦成績上位のクラブが勝ち上がる。つまり、プレーオフ出場クラブのなかで最下位のヴェルディが勝ち上がるためには、常に勝利が求められるわけだ。

 早くゴールが欲しい――。自分たちの思いどおりに試合が進められていないときはとくに、そんな焦りが生まれても不思議はない。

 ところが、DF田村直也が「大宮戦の前半は出来すぎ」と笑い、「大宮戦から感じていたが、0-0はうちのペース」と話したように、ヴェルディの選手たちは試合展開に左右されることなく、淡々とプレーを続けることができている。あたかも、いずれやってくる勝負どころに備えるかのように。

 その点においては、ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督の采配も明確だった。

 井上が前半にイエローカードを受けていたため、「球際の競り合いでファールが多い試合だったので、2枚目を受ける危険があった」と、後半早々、井上に代えてMF梶川諒太を投入。交代カードを使って、闇雲に攻撃に重心を傾けるのではなく、まずは、退場者を出さずに落ち着いて試合を進めることを優先させる。

 そして、梶川とともに投入されたFWレアンドロに加え、74分にはFWドウグラス・ヴィエイラを送り出して前線を厚くし、勝負に出た。

 結果的に、ヴェルディは90分間では得点が奪えていない。それどころか、ラスト15分の間には横浜FCのカウンターを受け、何度か際どいピンチも迎えていた。だが、それでもヴェルディの選手たちは慌てなかった。MF渡辺皓太が語る。

「(ロスタイムの表示が)7分と出たときに、イケると思った。まだ時間はたっぷりあったので、焦りはなかった」

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