真価を見せ始めたトーレスの告白。「残留争いは人生で初めての経験だ」 (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by KYODO

 そしてトーレス自身、いい変化の手応えを感じていた。

「確実にいい変化だったと思う。今は違った練習で、ポイントを稼ぐことができている。試合に向けた1週間、充実したトレーニングができていると言えるだろう」

 はたして、それはどのような変化なのか?

「今は攻守のバランスを探しながら、それをつかみつつある。それに、試合をコントロールすることだね。秩序をもって、攻撃できるようになっているんだ」

 一方でトーレスは課題も挙げている。

「まだ少し足りないのは、最後の仕上げとなる(敵陣での)"4分の3"でのプレーだろうね。もっと直線的に縦に行くとか、もっとプレースピードを上げるとか。そういうところだね。でも、それはこれからの練習次第できっと積み上げていけるだろう」

 トーレスはようやく、日本に慣れつつある。長旅からの時差、気候の違い、文化の違い、さらにチームの不振。注目度が高すぎて、ガードされすぎて、いびつな状態になっていたが、公開練習が増えたことなどによってそれからも解放され、真価を発揮しつつある。

「すべてはちょっとずつだよ。適応はできていると思う。焦りはない」

 そこで最後に聞いた。

――新しいプレッシャーは、乗り越えられそう?

「もちろんだ」

 12月1日、トーレスと鳥栖は、アジア王者である鹿島アントラーズとの敵地戦に挑む。引き分けでも残留は確定するが、どんな結果になるにせよ、トーレスの目覚めが待ち遠しい。本物の彼はこんなものではない。


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