J1連覇の川崎フロンターレが示す「日本らしいサッカー」の方向性 (2ページ目)

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro photo by Getty Images

 その家長に加え、ボランチに守田英正が台頭したことも大きかった。故障がちでプレーにムラのあったエドゥアルド ネット(現・名古屋グランパス)を放出できたのは、守田の成長があればこそ。中村憲剛をボランチで起用していれば、憲剛への負担が増えてパフォーマンスが低下する可能性は高かったが、守田が日本代表に選出されるまでになったことで、憲剛をトップ下で使え、それによって彼は好調を維持できたと言ってもいいだろう。

 昨季よりも総失点が減った守備面は、CBの谷口彰悟や奈良竜樹をはじめとするDFラインの安定感はもちろんだが、攻撃時のクオリティーの高まりも好影響を及ぼしていた。単にボールを保持する時間が長いだけではなく、ボールを失うにしても不用意な奪われ方が減ったのも大きかった。

 また、右SBのエウシーニョが、攻撃参加よりも攻守のバランスを取るシーンが多かったのも守備の安定につながったのかもしれない。ただ、個人的にはエウシーニョが家長と連係する攻撃に魅力を感じているだけに、そういう場面が減ったことは少しだけ残念ではある。

 チームの顔である中村憲剛は、来年で39歳になるが、まだまだ不安なくプレーできそうだし、攻守の核になる中盤には、大島僚太や守田ら若手が育っている。それだけに、気の早い話だが、来シーズンはリーグ3連覇とACL初制覇を期待せずにはいられない。そのための課題が、いかにチームとしてサッカーのクオリティーを維持しながら、選手層を厚くするかにある。

 川崎のサッカーは選手個々の能力の高さだけではなく、コンビネーションなどの連動性が生命線。レギュラーメンバー11人で戦うときのクオリティーは抜群に高いものの、そこから数名を入れ替えたときにクオリティーが低下してしまう。質を落とさずにACLとJリーグの両方を戦える最低15、16人の集団をつくれるかが二冠達成のカギだろう。この難しい課題を、鬼木達監督がどんな手腕で攻略するか興味深い。

 もうひとつが、ACLで「韓国クラブ」の壁をいかに越えるか。2008年から2017年の10年間のACLを振り返ると、下馬評では西アジアのクラブが有利と言われながら、優勝は2011年のアル・サッド(カタール)のみ。それ以外の内訳は、日本勢が浦和レッズ(2017年)、ガンバ大阪(2008年)の2度。中国の広州恒大が2度、オーストラリアのウエスタン・シドニーが1度、そして韓国勢は実に4度も制している。

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