難病を発症したFC岐阜前社長が語る、東京五輪へ向けた真のバリアフリー (2ページ目)

  • 恩田聖敬●文 text by Onda Satoshi

 FC岐阜のスタジアムに限らず、人工呼吸器ユーザーのような重度障害者が一番困るのは、障害者席に電源が無いことです。人工呼吸器を始めとして、電源の要るものを多く利用しています。昨今の台風による停電の際に、人工呼吸器の内蔵バッテリーが切れて、命を落とされた方もいらしたと聞いています。コンセントひとつが命綱となるのです。

 過去に私は、人工呼吸器ユーザーとFC岐阜の試合観戦をしたことがありますが、当時の私は電源の重要性に全く気づいておらず、すごく危険な観戦に招待していたことを、今になって猛省しています。

 一方私は、ALS患者に誘われてナゴヤドームに中日ドラゴンズの試合を観に行ったことがありますが、バリアフリーの観点から見たら素晴らしかったです。障害者用の駐車場の近くに、障害者専用の入口があり、そこには大病院並みのストレッチャーでも入る広さのエレベーターがありました。障害者席には、もちろん電源があり、介助者の席もセットで確保してありました。障害者トイレへの導線も、きちんとしていました。

 ナゴヤドームの開業が約20年前ですが、それよりかなり以前に作られた施設は「なんちゃってバリアフリー」が多いです。エレベーターがあればバリアフリー、スロープがあればバリアフリー、障害者用トイレがあればバリアフリー、といった感じです。設備をつけることだけで満足してしまうのです。

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