JFA審判委員長が語る「VAR導入が与えるジャッジやプレーへの影響」 (4ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki photo by Reuters/AFLO

 オーストラリアの選手はまずレフェリーに聞いてみようとします。もちろん、これをあまり激しくやるとイエローカードの対象になりますが、レフェリーはより、強くならなくてはいけないですね」

――主審もさることながら、副審の難易度が上昇するような気がします。

「レフェリーがレベルアップしていかないとダメだと思いますが、大変なのは主審より副審です。オフサイドの判定です。

 一度レフェリーが吹いてしまうと、プレーは止まりますが、実際、後から見たらオンサイドだったというケースがあります。いまは『疑わしければ上げない』ですが、VARになれば、ある一定の幅はオフサイドだなと思いながらも、旗を上げずにゴーとした方が、後から見直すことができる。PKになったけれどオフサイドでした、得点になったけれどオフサイドでした、と。でも、旗を上げて笛が吹かれたら、そこで終わってしまう。

 もちろん実際に試合の現場で、明らかなオフサイドと微妙な状況を線引きすることはすごく難しい。レフェリーも副審の旗が上がったとしても、すぐに吹いてはダメでしょう。インプレー中に吹いてしまうと即オフサイドで決着する。戻る場所がなくなる。オフサイドであることを半ば認識しつつも、アウトオブプレーになったときに確認する方がVARのもとでは理に適っています。

『副審は旗をなぜ上げないんだ』『主審の笛もなぜ遅いんだ』という声も出てくるでしょう。VARを本格導入した場合、積極的に伝えていかなければならないことです」

――VARの時代を迎えつつあるからこそ、冒頭で小川さんがおっしゃったように、ジャッジやレフェリングのことを、むしろ詳らかに報じた方がサッカーの発展につながりますね。

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