優勝まであと一歩。報われない戦いに死力を尽くした町田に称賛の拍手 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Yohei Osada/AFLO SPORT

 スタジアム直行のバス乗り場には、大勢のファンが列を作っていた。最終節を前に、3位で優勝を争うチームへの愛情と敬意か。昇格への道は閉ざされた中での戦いは、高潔かつ健気だ。

 満員のスタジアムでは、1万13人の人々が熱を放った。

 その町田の熱気に気圧されたのか、アウェーの東京Vは前半、消極的だった。前にボールを運べず、引っかけられる。前半はシュート0本に終わった。

 もっとも、町田も十八番とするボールに食らいつくプレッシングはかわされていた。スペイン人指揮官、ミゲル・アンヘル・ロティーナが率いる東京Vは、CB2人がペナルティエリア横の外側にそれぞれ広がって、町田の2トップは行き場を失う。スペイン人監督ではウナイ・エメリ(現アーセナル監督)なども使うプレス回避方法だ。これにより町田は、優勢ながらもリズムをつかみきれなかった。

 そして後半は、プレーオフ進出に向けて意を決した東京Vが巻き返す。サイドアタッカーを起点に後方から援護。サイドで優位を保ち、得点機を多く作った。

「お互いが特色を出し、拮抗した戦いになった。後半は、我々が左サイドからたくさんチャンスを作っている。ゴールは右サイドからだったが」(ロティーナ監督)

 76分だった。東京Vは左サイドから右サイドに大きくボールを展開。奈良輪雄太がダイアゴナルにクロスを入れる。それを中央からサイドに流れながら走った林陵平が、線と線を点で結びつけるように、飛び出したGKの鼻先で合わせ、先制に成功した。

 リードされた町田だったが、ここから底力を証明する。

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