「らしいスコア」で首位を死守。松本山雅、4年ぶりのJ1昇格なるか (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

 立ち上がりは、プレッシャーを感じていたのかもしれない。シンプルに前に蹴ってくる栃木の圧力に押され、後方での対応を余儀なくされると、コーナーキックやフリーキックを次々に与えてしまう。栃木は今季、このセットプレーを武器としているだけに、狙いどおりの戦いと言えただろう。つまり、松本とすれば、相手の術中にハマってしまいかねない状況にあったのだ。

 しかし、集中した対応でゴールを許さず、徐々に落ち着きを取り戻すと、後半は疲れの見えた相手に対し、落ち着いてボールを回す時間帯が増加。そして72分、石原崇兆が左サイドをえぐりクロスを入れると、逆サイドに待ち受けていた田中隼磨が落ち着いて押し込んで先制に成功。その後は栃木のパワープレーにてこずったが、FWの高崎寛之を最終ラインまで下げ、まさに11人全員で虎の子の1点を守り抜いた。

 スコアは1点差ながら、松本にとっては薄氷を踏む戦いだったわけではない。なぜなら、今季の松本は1-0で逃げ切る試合が多く、21勝のうち実に11勝を、このスコアでモノにしているからだ。

「もちろん、追加点が獲れれば楽な展開になるけど、僕たちはまだまだ、そんなに強いチームではない。1-0で勝つことが、山雅らしいサッカーだと思う」

 殊勲の田中は、現状の松本の戦いをこう説明する。

「点を獲った後も危ない場面はたくさんありました。でも、追加点を取れなくても、身体を張ってしのぎ切れるところが自分たちらしいなと試合中にも感じましたし、実際に結果につなげられていることは、成長している証だと思います」

 ディフェンスリーダーの橋内優也は、「相手のストロングポイントを消すことが、自分たちのストロングポイント」と主張する。そのスタイルを実践するには、入念なスカウティングが求められるが、そこは反町康治監督の確かな手腕の賜物だろう。アルビレックス新潟、湘南ベルマーレ、そして松本と3つのクラブをJ1に導いた知将は、この栃木戦でも万全な対策を敷いて、目論見どおりに勝ち点3を手にしている。

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