残留ファーストの磐田。持ち味を捨て、腹をくくって勝ち点1奪取 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 アジアチャンピオンズリーグ出場を目指すFC東京は、残留を争う磐田を戦術的に手玉に取った。室屋成が右サイドを鋭く切り裂き、ディエゴ・オリベイラにクロスを折り返すと、ヘディングシュートはバーを直撃。左サイドでは太田宏介が何度も攻め上がり、深い位置からクロスを供給し、磐田DFを狼狽させている。

 そして34分だった。高萩洋次郎が右サイドで起点になって、磐田のディフェンスを食いつかせると、抜け出した室屋がスルーパスを受ける。ペナルティエリア内に侵入して切り返したところ、DFの足が引っかかった。判定はPK。これでFC東京の先制かと思われたが、タイミングをずらしたオリベイラのキックは左に外れた。

「(相手の)プレッシャーやボールを奪った後の動き出しが早くなって、(自分たちの)後ろがだいぶ重たくなってしまった。室屋、太田のサイドバックにあそこまで頻繁に上がられてしまった。ギリギリで失点を回避することができて、PKのところはゲームのポイントになった」(磐田・名波浩監督)

 凌いだ磐田は後半、戦いを修正した。前線からのプレスを強めつつ、回避されたらリトリート(後退)し、人海戦術でスペースを消して守備を固め、状況を挽回。攻撃は単発ながら、相手を警戒させるだけの力はあった。山田がひとりで切り込み、惜しいシュートを放つ。大久保は遠目から無回転のシュートを狙っている。分厚い守備と一発のカウンターで、消耗戦に持ち込んだ。

「今は(残留争いだから)しょうがない。まず守備から入って、ゴールが無理なら、下がってキープして、ゲームを作って。そこは(監督から)『自由に(判断して)』と言われているから」(磐田・大久保嘉人)

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