サンフレッチェ、終戦か。森﨑和幸が示した泥沼から脱出する方法 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 31分にはコーナーキックからティーラシンが先制ゴールをマーク。セットプレーからの得点も、今季の広島の強みであり、直近の5試合でわずか1点しか奪えていなかった攻撃面に、得意の形で勢いをもたらした。

 これで余裕が生まれた広島は、後半に入ると、磐田のサイドの背後を突いてチャンスを量産。右サイドを起点に巧みなパスワークで奪った59分の2点目は、よかったころの広島を想起させるものだった。

 ところが、65分にセットプレーから失点。ミスが絡んで献上したこの1点が、試合のターニングポイントとなった。

「あそこで堅さを見せなければいけなかった。なぜコーナーキックになったのかというところも含めて、隙を見せてはいけなかったし、もっとシンプルなプレーをするべき場面だった」

 城福浩監督が悔やんだように、ここで隙を見せたことで流れを失った。

 そもそも、今季の広島は攻撃だけでなく、セットプレーの守備にも強みがあった。第26節の鳥栖戦まで、PKを除いてセットプレーからの失点はひとつもなかったのだ。しかし、勝てなくなった時期はセットプレーからの失点が増加。この磐田戦でも、同じ過ちを繰り返した。

 それでも、まだリードを奪っていたのだから、落ち着いて試合を運べばよかった。だが、交代策やシステム変更を駆使し、勢いを加速させた磐田の攻勢の前に後手を踏んだ。

 顕著だったのは、運動量の低下だ。前半は局面の争いを鋭い出足で制していたものの、失点直後からは球際で競り負け、相手にボールを握られる時間が増加した。

 勝てなくなり始めた時期に、青山敏弘に話を聞くと、「走れるようになれば、また上がってくる。僕らはうまくないから、走らないとダメ」と話していた。たしかに今季の広島は、激しい守備でボールを回収し、早めに前に入れてパトリックの強さと速さを生かすシンプルな戦いで結果を出してきた。その戦いの軸となったのは、走力を含めたフィジカルの充実にあった。

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