鹿島の選手のJデビュー時。椎本邦一は「親みたいな気持ちになる」

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko
  • 井坂英樹●写真 photo by Isaka Hideki

遺伝子~鹿島アントラーズ 絶対勝利の哲学~(35)
椎本邦一 後編

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「楽しかったですね。サッカーを楽しめました」

 プロ4年目にして、Jリーグ初先発出場となった久保田和音が充実感に満ちた表情を浮かべ語る。

 公式戦では10月3日のACL水原三星戦以来の勝利を1-0というスコアで飾った10月31日Jリーグの対セレッソ大阪戦。先発メンバーに並んだのは、リーグ戦初出場となる久保田、初先発の山口一真や田中稔也たちだった。若い選手たちを支えるのは、GKクォン・スンテ、CB昌子源、犬飼智也、ボランチの永木亮太と小笠原満男。それでも1週間前のACL対水原三星戦の先発メンバーから9人も選手を入れ替えた。

 ルヴァンカップを準決勝で敗退してしまったが、それにより得たのが1週間のインターバルだ。「今年に関して言えば、(試合間が)1週間空くのは、『本当に時間がある』という感覚です(笑)」と犬飼。この時間が重要だった。

 10月24日の韓国でのACL準決勝を終えたチームは2日間のオフを経て、27日に練習を再開。今季はなかなか実施できなかった紅白戦も行い、試合を迎えられた。

 ACL決勝を前に、Bチームとも言えるようなメンバーでリーグ戦に挑むのは、ある種、当然のことなのかもしれない。しかし、来季のACL出場権獲得のための争いも佳境を迎え、勝ち点を落とすことはできない。「総力戦」と常々語っている大岩剛監督にとっても大きな決断だっただろう。指揮官の勇気、そして、厚い信頼に応えるかのように「選ばれた」者たちは、使命感に燃え、結果を手繰り寄せた。昌子が振り返る。

「いい試合だった。若い選手が特に頑張ってくれた。選手全員の名前を言いたいくらい、全員が良かった。プレーの精度という部分での課題もあるけれど。たとえば(山口)一真が最後までシュートにこだわって、強引に打ったシーンというのは、点を決めたい、勝ちたいという気持ちが表れていた。僕らも若い選手をサポートしながらなんだけど、若い選手も僕らをサポートしてくれる。非常にいい関係だったんじゃないかと思います」

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