鹿島のスカウト担当部長は、「安部裕葵に柴崎岳と似たものを感じた」 (3ページ目)

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko
  • 井坂英樹●写真 photo by Isaka Hideki

「水原の戦い方が変わらなかったので、裏が空いていた。だから同点弾に繋がったんだと思う」と話す鈴木の粘りがその3点目を生む。スローインのボールを受けて、キープし、DF陣を引きつけると、中央へパス。それにセルジーニョが反応し、落ち着いたシュートがネットを揺らした。3-3の同点となったのが82分。水原が勝ち抜けるためには、あと2点が必要な状況を作った。

 土居聖真に代えて、犬飼智也が投入される。3バック気味に3人のセンターバックが並ぶ布陣だ。誰もがボールに集中し、クリアしようとするあまり2人がボールに寄ってしまい、シュートを打たれる。そんなピンチを救ったのがこの日好セーブを続けていた、2度のACL王者に輝いた経験を持つスンテだった。

 チャンスがピンチになり、ピンチがチャンスになる。そして、またピンチが訪れる。息もつけない展開。そして、アディショナルタイム6分を経過して、試合終了の笛が鳴る。

 歓喜に沸くという空気はなかった。突破した安堵感と、まだ終わりじゃないという緊張感が漂っていた。達成感を抱くのはまだ早い。

「次はイランで、10万人のスタジアムでしょ? たまらないなぁ」と鈴木。背番号9を担う男は「ゴールを決めたかった。でも、最後僕の頑張りがセルジ(セルジーニョ)のゴールに繋がったから、ギリギリ、9番の仕事を果たせたのかなぁ」と静かに笑った。

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