バルサ化は1日にしてならず。
ヴィッセルのリージョ革命は間に合うのか

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 それでも川崎は、慌てることはなかった。

「ボールを握られるところが増えていたけど、攻撃に関しては間を取ったり、背後を突いたりと、うまくいくシーンも多かった」

 中村憲剛が言うように、決して盤石とはいえない神戸の守備組織を攻略するのは難しくないと感じていたようだ。

 この日の神戸は、ダイヤモンド型の4−4−2を採用。トップ下にはポドルスキが入り、イニエスタを左MFに配置。右MFに三田が入り、藤田直之がアンカー役を務めた。

 もっとも、形はあってないようなもの。ポドルスキは気ままにポジションチェンジを繰り返し、左のイニエスタも中央寄りに位置取る。空いた左のスペースに左サイドバックの橋本和が攻め上がり、サイド攻撃を担った。

 しかし、イニエスタが中心となってボールをうまく回せたときはよかったが、次第にパスがつながらなくなり、ロングボールが増えてくると、この形は機能性を失った。つなげないにもかかわらず、両サイドバックは高い位置を取り、ロングボールを跳ね返されて、あっさりと背後を取られてしまう。イニエスタの存在感も次第に希薄となった。

「つなぐためのサポートのコースもなかったし、裏に蹴ったところで相手に回収されて、また攻撃されてしまう。何とかラインを上げようとしたけど、前半のようにプレスがかからなくなり、ボランチの脇を使われてしまった」

 藤田がそう振り返ったように、両サイドに広大に空いたスペースを突かれて、次々にピンチを招く。前半のうちに1点を返されると、65分には右サイドを崩されて、齋藤学に移籍後初ゴールとなる同点弾を浴びてしまう。

 途中から2トップを務めていた古橋を左サイドに回して状況改善を試みたものの、今度は前線の勢いが消えてしまうという悪循環。勢いに乗った川崎の波状攻撃を食い止めることができず、69分、76分に失点し、3−5と屈辱的な逆転負けを喫した。終盤のピンチを相手のシュートミスに助けられたことを考えれば、あと2、3点を失っていてもおかしくない展開だった。

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