自慢の両翼がキレキレで大暴れ。
マリノス、17年ぶりの戴冠なるか

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 押せ押せの鹿島はシンプルにサイドを使って攻勢に拍車をかける。終盤には負傷離脱していた昌子源を送り込み、チームの士気はさらに高まった。しかし、最後に上回ったのは、横浜FMの執念だった。身体を張った守備で鹿島の猛攻をしのぎ、1点のリードを守り切った(この日の試合は2-2の引き分け)。

 余裕の展開から一転、最後は薄氷を踏むぎりぎりの戦いとなったのは反省材料ながら、横浜FMにとっては名門復活の狼煙(のろし)を上げる激闘だった。

 試合を振り返れば、大きかったのは前半の戦いだろう。あくまで攻撃的な姿勢を貫き、試合を優位に展開した。その攻撃スタイルの肝となったのは、仲川輝人と遠藤渓太の両翼だ。鋭いドリブルを持ち味とする両者の推進力が、前半の横浜FMの攻勢を導いた。

 ウーゴ・ヴィエイラの先制点は、右サイド深くでボールを受けた仲川が、鋭いカットインから中央の天野にラストパスを供給したのが発端だった。仲川は天野の折り返しを押し込んで2点目も奪っており、全得点に絡んだこのアタッカーがファイナル進出の立役者となったのは間違いない。

 2015年に専修大から加入した仲川だが、ここまでのキャリアは試練の連続だった。出場機会に恵まれず、2016年にはJ2のFC町田ゼルビアに期限付き移籍。復帰した昨季も、シーズン途中にJ2のアビスパ福岡にレンタルで出されている。

 今季もシーズン序盤は途中出場が多かったが、5月2日のジュビロ磐田戦でJ1初ゴールをマークすると、ワールドカップ中断開け以降は完全にレギュラーへと定着。コンスタントに得点を奪い、ウーゴ・ヴィエイラに次ぐチームの得点源となっている。

「ケガなくやれていることが大きい」と好調の理由を語る仲川は、身長161cmに見えないほど、ピッチ上では大きく映る。鋭いドリブルで相手を置き去りにするだけでなく、クロスに対して果敢にゴール前に飛び込んでフィニッシュに結びつける。

 2点目の場面を振り返り、「あれは監督が目指しているゴールシーンだし、自分たちが思い描いた形でもある。練習からやってきたことを表現できたゴールなので、すごくよかった」と胸を張る。今年で26歳、遅咲きのストライカーは、今まさにキャリアの最盛期を謳歌しているように思える。

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