ベルマーレの勇気が生んだ同点弾。「他人事」だった決勝へ前進 (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by Getty Images

 その後もピンチはあったものの、好セーブを連発した31歳の守護神がチームの成長を語れば、前線で躍動し、積極的にゴールを狙った同じく31歳の梅崎司もこう語る。

「最初から勇気を持って、堂々とやっていこうという話はしていました。失点は残念でしたけど、それにまったく動じずに戦い続けることができたから、同点に追いつくことができたと思います」

 そこにまず、湘南の確かな成長を実感せずにはいられなかった。前半9分、ボランチで先発起用された金子大毅が前線にパスを送る。これは柏のDFに阻まれたが、こぼれ球を拾った菊地俊介がためらうことなく右足を振り抜くと、DFに当たって同点に追いついてみせた。

 その後も湘南は、代名詞でもある前線からの激しいチェイシングでボールを奪うと、柏のゴールを脅かす。前半39分には湘南がロングボールを供給すると、梅崎の落としからFWの山﨑凌吾がシュートを狙った。

 もちろん、ホームの柏も反撃に出る。前半終了間際にはカウンターを仕掛けると、右サイドバックの小池龍太がドリブルで持ち運んでフィニッシュした。

 エンドが変わった後半も、湘南が岡本拓也の折り返しからふたたび山﨑がゴールを狙えば、柏もカウンターから瀬川がシュートを放つ。後半30分には、その瀬川が高木利弥のクロスから決定的ともいえるヘディングシュートを放ったが、これは秋元がセーブ。ともに縦を意識した攻防は見応えがあったし、90分通して手に汗握る展開が続いた。

 ただ、そうした見応えある試合展開になったのも、湘南がチームとしてさらにステップアップしようとする姿勢に表れていた。

 湘南は前線から激しくプレッシャーをかけるだけでもなければ、武器である運動量を駆使するだけでもなかった。そうした特徴を活かしつつ、柏から主導権を握ろうと、ときにはショートパスをつないでコンビネーションで打開したし、ときにはボールを奪って素早い攻撃からゴールに迫った。さらには90分間、DFラインを高く保ち、チーム全体で仕掛け続けた。後半になり、カウンターを受ける場面が増えたのも、そうした「前へ」「縦へ」という強い姿勢を貫いた結果でもあった。

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