ベルマーレの勇気が生んだ同点弾。「他人事」だった決勝へ前進

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by Getty Images

 結果から言えば、柏レイソルvs湘南ベルマーレが激突したルヴァンカップ準決勝第1戦は、1-1の引き分けだった。ホーム&アウェーの2試合で決着をつける準決勝は、半分となる90分を終えただけに過ぎない。ただ、試合後の指揮官のコメントを聞けば、どちらが第1戦を優位に終えたかは明らかだった。

貴重なアウェーゴールを決めた菊地俊介貴重なアウェーゴールを決めた菊地俊介 第1戦で貴重なアウェーゴールを奪った湘南の曺貴裁(チョウ・キジェ)監督はこう切り出した。

「ルヴァンカップ準決勝で指揮を執るのは監督人生で初めてのことですし、(うちの)ほとんどの選手たちもこうした舞台に立った経験がないなかで、非常に堂々とプレーしてくれた」

 一方、ホームで戦った柏の加藤望監督は次のように悔しさをにじませた。

「ホームでの戦いということで、しっかりとゼロで抑えて次に進みたかったというのが本音です」

 どこか、この試合に挑む姿勢や、思いまでもが表れていたような気がした。

 試合はいきなり動いた。開始1分、柏の中川寛斗が右サイドに展開すると、抜け出した江坂任がゴール前に折り返す。柏のスピードに乗った一連のプレーに、湘南のDFはまったく対応できず、ファーサイドに走り込んだ瀬川祐輔が、まるで「いとも簡単に」とでも言いたくなるほど、あっさりと右足で決めた。

 あまりに早い時間帯での失点に、決勝進出を意識して、湘南は硬くなっているのではないか――。そう推察したくなるような展開だったが、ピッチに立っている選手たちは違った。最後尾からチームを見守るGKの秋元陽太が言う。

「(失点して)最初は本当にどう声をかけようかなと思ったんですけど、みんなの顔を見たら、全然大丈夫そうだった。だから、切り替えろとだけ話をしたら、すぐにシュン(菊地俊介)が得点を獲ってくれて。欲を言えば、もう1点獲れればよかったですけど、あの落ち着きが同点につながったのかなと思います」

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