鹿島対川崎Fに派手さはなし。
けど見ごたえ十分、しびれる一戦だった

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 そうした展開のなか、最後にふたたび鹿島の勝機が高まった。シンプルにサイドを押し込み、コーナーキックを立て続けに獲得。しかし、ボルテージが上がるゴール裏の期待とは裏腹に、ゴールネットが揺れる場面はついに訪れなかった。

「向こうはカウンターとセットプレーが狙い、というのがわかっていた。今までだったら、ポンとやられて、1−0で持っていかれるという試合だったけど、やられなかった。そういうタフさというのは、このチームについたと思います」

 中村が振り返ったように、川崎Fの歴史には常に、「勝負弱いチーム」というレッテルが貼られていたものだ。しかし、昨季にリーグ優勝を成し遂げ、今季も成熟した姿を見せている。本来のサッカーができなくとも、異なるストロングポイントを示して、最低限の結果を手にする。したたかさがウリの鹿島との我慢比べで、互角に渡り合ったのは大きな収穫だろう。

 一方の鹿島にとっても、ポジティブな勝ち点1ではなかったか。ACL、天皇杯、ルヴァンカップとすべての大会で勝ち進み、ハードスケジュールを強いられるなか、首位チームからポイントをもぎり取ったのだ。リーグ優勝の可能性は限りなく小さくなったものの、他大会でのタイトルラッシュが期待される、たくましい戦いぶりだった。

 両チームともにシュートは6本ずつ。派手さはなく、娯楽性には欠けていたかもしれない。しかし、一瞬も気の抜けない緊迫感は最後まで保たれていた。相手のよさを打ち消し合い、とことん勝負にこだわり抜く。トップレベルのチーム同士が死力を尽くした、まさにプロフェッショナルな一戦だった。

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