戦術浸透もベガルタに物足りなさ。答えは野津田と板倉が持っている (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

 仙台にも自信を持ってボールを運ぼうとする選手がいた。野津田と板倉滉のふたりである。

 シャドーとして出場した野津田は積極的にボールに絡み、パスを出した後に動き直して、また受ける。そんな動きを繰り返して戦況打開を試みた。後半途中から仙台の保持率が徐々に高まっていったのは、野津田がボランチの位置に下がってパスワークの起点となったことが大きかった。

 3バックの左に入った板倉も、守備ではやや後手を踏んだが、プレスを落ち着いていなしながらつなぎの意識を高め、時に自ら持ち上がり、ギャップを生み出そうと試みた。

 面白いのは、ふたりが試合後に同じような発言をしていたことだ。

「同点に追いついたときのような形を作るうえで、もっと全員で受ける意識を高められたらよかった」(野津田)

「もう少し全員が受ける準備をしていれば、プレスを剥がせたと思う。練習から意識的にボールを受けることをやらないといけない」(板倉)

 両者はともに、サンフレッチェ広島(野津田)と川崎フロンターレ(板倉)からのレンタル選手。ボールを大事にする哲学が備わるチームで自信が育まれたふたりは、ボールを受ける意識が足りない周囲に物足りなさを感じているのかもしれない。

 これで仙台は、2連敗で8位に転落(9月30日終了時点)。ぼんやりと見えていたACL出場が大きく遠のいた。

 2014年に渡邉監督が就任以降、仙台はボールを大事にするサッカーに取り組んできた。14位(2014年)→14位(2015年)→12位(2016年)→12位(2017年)と、なかなか結果には結びついていないが、着実にスタイルは根づき、今季はようやく上位争いを演じられるレベルにまで到達した。しかし、この日の戦いを見るかぎり、さらなる高みを目指すには物足りなさは否めない。

 自信と勇気――。仙台に求められるキーワードである。

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