清水エスパルス、残留争いから脱出。「しぶとさ」もたらす2トップの力 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 しかし、後半になると、清水は2トップが牽引する形でペースを握る。北川航也がエリア内でマークを外し、シュートを打ち、GKにブロックされる。しかし、それを拾って右からのクロスをドウグラスが強烈なヘッド。シュートは入らなかったものの、たたみかけたことで前への推進力が出た。

 そして65分だった。左サイドで「奪って、失って、奪って」というボールを巡る攻防で勝った後、白崎凌兵が左サイドを走る前線のドウグラスにスルーパスを送る。特筆すべきは、北川が中央で裏に走って牽制し、バックラインの3人を同時に引きつけていた点だろう。フリーになったドウグラスは、遠目からだったが、構わずシュートを選択し、GKが弾いたボールを、詰めていた北川が押し込んだ。

 トランジション(攻守の切り替え)からの鋭いショートカウンター。それは今シーズン、清水の特色になっている。球際の争いとボールを前に運ぶ一瞬の力、そして仕留める力。それがチームとしてのしぶとさ、粘りを生んでいる。

「(前節、ガンバに敗れた試合も含め)内容が悪かったわけではない。今日は、ケーキに喩えるならまずは土台から、次に飾り付けをする、という基本的な仕事を、選手にはまず要求した。ラインをコンパクトに保って、ディフェンスラインは下げすぎず、押し上げる。その点、前線の2人は攻撃だけでなく、中盤で相手のスペースを与えない、という役割もしてくれていた」(清水/ヤン・ヨンソン監督)

 その戦い方は"相手のボールありき"で、能動的とは言えない。戦術的に相手次第になるだけに、3連勝の後、3連敗することもある。受け身が基本だけに、先制すると強いのだが、されると後手を踏むのだ。

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