途中交代に苛立ちの表情。トーレスはなぜゴールできなくなったか (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Jun Tsukida/AFLO SPORT

「(トーレスは)体をぶつけるのはうまいですね」

 スペインで3シーズンにわたってプレーし、柏に復帰した鈴木大輔は、マッチアップしたトーレスについて語っている。

「競り合いでは、正直には跳ばない。先に体をぶつけてきて、あわよくば入れ替わろうとしてくるので、そこは注意していました。ただ、下がってボールを受けられる分には、それほど怖さはないというか......」

 入団以来、トーレスはそのポテンシャルの高さを示してきた。速さ、高さ、強さ、うまさ、どれも桁違いだ。サイドに流れてボールを受けることで、味方にスペースを与え、起点になっている。パサーの役回りでも、その非凡さを示してきた。

しかし、お膳立ては彼本来の仕事ではない。

<トーレスをどう生かせばいいかわからない>

 チームメイトに芽生えた疑心暗鬼が、このままでは膨らみ始める。

 トーレスは決して器用なタイプではない。ゴールによって、その境地にたどり着いた。リバプール時代はクリスティアーノ・ロナウド(当時マンチェスター・ユナイテッド)と最後まで得点王を争い、ユーロ2012では得点王に輝いている。下降線に入ったと言われるが、アトレティコ・マドリードでは過去3シーズン、(カップ戦を含めての)連続2桁得点を記録し、ヨーロッパリーグ制覇をもたらしているのだ。

 そのプロフェッショナリズムのおかげで、新天地でも受け入れられたわけだが、彼が愛されてきた本当の理由はゴールにある。そのジレンマは、トーレス自身が一番、強く感じているだろう。その証拠に、柏戦で交代を命じられたときには苛立ちを隠せなかった。

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