すべては強くなるために。7失点も
コンサドーレはぶれずに戦い抜いた

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 7分には左からのクロスのこぼれ球を拾った荒野拓馬が、フリーの状態でシュートを放つもボールは枠を捉えきれない。直後にもふたたび荒野が決定機を迎え、14分にもチャナティップが決定的なシュートを放つ。いずれもゴールにはつながらなかったが、川崎Fのお株を奪うような鋭い攻撃を繰り出し、試合の主導権を完全に握っていた。

 しかし、札幌の勢いは長く続かなかった。「あのようなミスを繰り返してしまっては」とペトロヴィッチ監督が嘆(なげ)いたように、札幌はミスを頻発し、自滅していった感は否めない。

 家長の先制点も中盤でのボール逸がきっかけで、中村の2点目も同様。さらに3点目、5点目はいずれもビルドアップの拙(つたな)さを狙われたものだった。

 ミスを誘発し、チャンスを作りながらも決めきれなかったのが札幌なら、ミスを逃さずモノにしたのが川崎F。極論すれば、この試合はそういう試合だった。

 それは、クリオリティの差とも言い換えられるだろう。今季の札幌はペトロヴィッチ監督のもとで、最終ラインから丁寧にボールをつなぐポゼッション型にトライしている。求められるのは確実な足もとの技術と、質の高いパスワーク。しかし、この日の札幌は川崎Fのプレッシャーが強まり始めると、危険な位置でボール逸を繰り返した。対する川崎Fもショートパスをベースとしたスタイルを標榜するが、浮足立った立ち上がりを除けば、後方で失うことはほぼなかった。その質の違いが、両者の明暗を大きく分けたのだ。

「我々は今、3位、4位を争う位置につけているが、現実的な話をすれば、チームのレベル、個々のレベル、クラブの規模を見ても、3位、4位を狙っていけるようなチームではない」

 ペトロヴィッチ監督は、札幌というクラブの立ち位置を謙虚にわきまえている。しかし、こうも続ける。

「ただ、日々トレーニングを重ねるなかで、ここまで積み上げることができた。それもまた現実だ」

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る