イニエスタ、トーレス、久保建英に見る、スペイン流「崩しの極意」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 2点目も、トーレスはバックラインの前を横切るパスを入れ、それに走り込んだ金崎夢生が左足で決めている。3点目は、トーレスがバックラインを横切って右サイドからのクロスを呼び込み、ヘディングで叩き込んだ。それぞれがマークを外した状態を作り、得点に結びつけていた。

 バックラインの裏に入れば、距離的にはゴールへ近づくが、必ずしも得策というわけではない。

 その感覚は、バルセロナで薫陶を受けた久保建英(横浜F・マリノス)にも共通しているのだろう。

 J1初先発となったヴィッセル神戸戦。久保は自ら左足で右サイドに展開した後、全速力でペナルティエリア内に駆け上がって、バックラインを下げている。そして味方が切り返したのに反応し、停止して、一歩下がる。相手の逆をとって、バックラインの前でマークを外し、トラップから精度の高いシュートを流し込んだ。

 酷な言い方をすれば、神戸の守備は稚拙だった。そもそも簡単にラインを破られており、バックラインはズルズルと下がっている。バックラインの前にいたはずのアフメド・ヤセルはクロスが入った瞬間に下がってしまい、エリア内で久保にスペースを与えていた。

 守る側としては、バックラインの前でマークを外された状態でボールを持たれた場合、後手に回らざるを得ない。なぜならラストパス、シュート、ワンツーなど、いくつもの選択肢を与え、焦って食いつけば、完全に裏を取られるからだ。それは待ち構える部隊が、柵も土塁も堀もなく、騎馬隊に駆け込まれるに近い。相手に殺到される感覚で、とても守りきれない。

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