J1昇格へ。東京Vのスペイン人監督がこだわる「ボールの出口」の作り方 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komoya Yoshiyuki photo by Etsuo Hara/Getty Images

 その後も、前半はヴェルディがペースを握っている。軽快なパス回しでディフェンスを幻惑。ドウグラス・ヴィエイラが決定機をつかみ、ニアサイドへの際どいシュートを放っている。選手の立ち位置がよく、コンビネーションで上回った。

「Salida de balon」

 ロティーナは象徴的に、このスペイン語フレーズを使う。「ボールの出口」が直訳で、ビルドアップと訳されることが多い。しかし、むしろ直訳のほうが意図は伝わるだろうか。ボールの出口を作るには、それぞれの選手が正しい立ち位置を取って、スペースをうまく使う必要がある。適切な距離感が生まれることにより、それは攻撃だけでなく、守備でのポジショニングを修正し、改善することにつながる。

 いわゆる「ポジション的優位」がピッチに生まれるのだ。

 ロティーナ・ヴェルディはそれをトレーニングし続けてきた。ポジションという準備動作で勝つことにより、先手をとる。その成果は出ている。

 ところが、後半は様相が一変した。

「後半は正直、なにが起こったのか、うまく説明がつきません」

 ロティーナはそう言って肩を竦(すく)めている。ヴェルディは完全に流れを失った。横浜FCにボールを明け渡し、いたずらに波状攻撃を受け、失点は時間の問題。一気に天秤が傾いてしまった。

 J2は、選手もチームもあらゆる面で成熟しきっていない。そのためプレーが不安定で、しばしば瓦解現象が起きてしまう。流れを制御できないのだ。

 もっとも、スペインで戦術家として名を馳せたロティーナは、然るべき策を用意していた。

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