イニエスタは周りの力を3割増しに。そのすごさを神戸同僚が細かく説明 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by YUTAKA/AFLO SPORTS

「天皇杯(鳥栖戦、イニエスタは途中出場)でも、アンドレスが入るだけでプレーのテンポが上がりましたね」

 神戸に在籍して2年目になるセンターバック、渡部博文は語っている。

「(アンドレスは)とにかく下を向かない。常に次のプレーの選択肢があって、動き続けていますね。ノールックで自然にパスを出せて、コースを読めない。守っている方は、あっちを向いていたはずなのに......という感じになります」

 イニエスタは相手が重心を移した足を選び、パスを出しているのだろう。そのため、守る側は脇を通るパスに反応できない。また、わずかにキックのテンポをずらすことで、パスを通している。理論的には説明できるが、実践するのは至難の業だ。

「受け方、出し方、タイミングがとにかくいいですね」

 渡部はそう言って、説明を続ける。

「ボールを取ろうとしても、いつも遠いところに置いているので。キープするというのとは少し違うかもしれません。キープは手を使って相手を抑えて、という感じになるんでしょうけど、アンドレスの場合、手は距離感をつかむ程度。相手に飛び込ませない間合いを作れるんですよ。力でいこうとすれば、クルッと回ってしまうし。無理に止めようとすれば、ほとんど必ずファウルになります」

 横浜FM戦で、イニエスタが珍しくボールを失う瞬間があった。ドリブルで切り込もうとしたところを、横浜FMのMF喜田拓也にコースを読まれ、カットされている。その刹那だった。イニエスタは反転して追いかけ、ボールのつつきどころを即座に探し、鮮やかな手口で奪い返し、ゴールに迫っている。

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