トーレスがいることで、川崎フロンターレの守備がひと際光った (2ページ目)

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • 高橋学●撮影 photo by Takahashi Manabu

 まだまだ、ある。1トップを務める小林悠を筆頭に、前線から高い位置でボールを奪おうとする守備意識こそが、フェルナンド・トーレスへの供給を阻んでいたし、ひるがえって川崎Fの攻撃を具現化させていた。キャプテンが板についてきた小林の言葉を借りる。

「チーム全体としてしっかりとラインを上げられているということが、まずはひとつですよね。それができているから、僕らは相手陣内に押し込んでハーフコートでサッカーができているんです。だからボールを失っても、すぐにまた守備にいけますし、すぐにまたマイボールにすることもできている。攻守の切り替えも含めて、相手コートで潰す守備が浸透していきている証拠だと思います」

 パスワークを活かしたサッカーを標榜しているため、攻撃ばかりが着目されがちな川崎だが、着実に守備もレベルアップしている。暫定ながら2位に浮上した川崎は、ここまで21試合を終えて16失点。これは首位を走るサンフレッチェ広島と並び、リーグ最少失点である。ふたたび最終ラインを統率する谷口のコメントを引用する。

「『守備は一番前から始まっている』というのはオニさん(鬼木達監督)も言っているところですし、みんながコースを限定してくれるから、僕らDF陣がボールをきっちり狙えたり、奪えているところもある。そういう意味では、みんな高い守備意識を持ってくれていますし、その分、攻撃も一番後ろから始まるという気持ちでプレーしています」

 そのすべては攻撃のため、得点のためにある。「攻撃は最大の防御」と言わんばかりに、鳥栖戦でも攻めに攻めた。

 前半15分に左サイドでテンポを作ると、一気にスピードアップ。大島の縦パスを中村憲剛がヒールでつなぐと、走り込んだ阿部浩之がシュートを放った。前半41分にも大島がゴール前に駆け上がると、守田からのパスをダイレクトで折り返し、ふたたび阿部がシュートした。

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