イニエスタが超一流である「証」は、ボールを持っていないときに見える (2ページ目)

  • 津金壱郎●構成 text by Tsugane Ichiro photo by Getty Images

 Jリーグでは、相手陣内での横パスやバックパスが圧倒的に多く、これは、選手が「チャレンジする」よりも、「ボールを失わない」ことを優先してしまうからだろう。

 日本では、ポゼッションサッカーというのは、パスをしながらただひたすらボールを保持することと勘違いしている人もいるのではないか。何のためにボールを保持するのかを考えたとき、本来、得点を奪って勝つためのポゼッションなのだが、Jリーグでは「ボールを保持すること」それ自体が目的になってしまっているケースが見られる。

 つまり、欧州のトップと比べると、Jリーグはボールを失うことを恐れて横や後ろにばかりパスをする傾向が見られる。

 パスを回す目的は、相手の守備ブロックを左右に揺さぶり、DFの間にギャップが生まれた瞬間、そこを縦パスやドリブルで突くことにある。だからこそ、イニエスタのプレーの根底には常に『縦パスを入れる』ことがあり、そのことを理解して彼のプレーを見ると、世界のトップと日本の差をあらためて実感できるはずだ。

 ただし、イニエスタひとりでは、チームはなかなか変貌しないもの。イニエスタがどんなに正しい判断でプレーしても、味方がそのレベルになければ、宝の持ち腐れになってしまう。

 ルーカス・ポドルスキが故障から復帰してくれば状況は少し変わってくるはずだが、そうした判断力と技術力を持つ選手が増えれば、神戸でのイニエスタはもっとクオリティの高いプレーを披露してくれるはずだ。

 私が個人的に見たい組み合わせは、川崎フロンターレの大島僚太とイニエスタのコンビだ。W杯ロシア大会では出番がなかった悔しさを晴らすかのように、大島はJリーグで好調を維持している。川崎のサポーターには怒られてしまうと思うが、大島がイニエスタとプレーしながら、その高次元のエッセンスを吸収して、どう進化するのか見てみたいと、つい思ってしまう。

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