勝ち切れないレッズ、柏木陽介のジレンマ。「次の人が動いてくれない...」 (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

 その瞬間、頭を抱えるオリヴェイラ監督と、拳を握る高木琢也監督――。勝ち点1を分け合う結果となったものの、狙いどおりに試合を運んだのは長崎のほうだったといえる。

 浦和のジレンマが見えた試合でもあった。カギを握るのは柏木だ。

 柏木が下がってボールを受ければ、ビルドアップはスムーズになるが、前線の連動性を失う事態を招く。一方で高い位置に上がれば、後ろでボールが回らなくなる。いずれの状況でも、"柏木の不在"が響いてしまっていた。

「試合の流れを見ながら引いたり、前に出ていったりということはできているし、落ち着いてプレーできている」と、柏木は状況に応じたポジション取りをしていると明かす。ただし、いいポジショニングが成果につながらない。より苦悩が感じられたのは、高い位置を取ったときだ。

「俺が前を向いている瞬間、(興梠)慎三以外、前にいってくれないというのがある。でも、慎三だけだと、そこのラインは読まれているから、出すのは難しい。警戒される分、次の人が動いてくれないと。足もとだけではなく、スペースで受けるというところを突き詰めてやっていきたい」

 もちろん、前に人数がかかれば、カウンターの餌食になりやすい。そのリスクを排除している分、今の浦和には安定感がある。広島、川崎Fに次ぐ失点の少なさが、好調の要因のひとつだろう。

 ただし、この日の引き分けで、浦和の引き分けの数は7となった。これは、セレッソ大阪に次ぐリーグ2位タイの多さである。手堅さはあるものの、勝ち切れない。これが今の浦和が抱える最大のテーマだろう。

 手堅さを保つのか。それともカウンターのリスクを受け入れ、前に人数をかけるのか――。柏木の意思表示は明白だ。

「狙っていかないと、サッカーは始まらない」

 8位にとどまる浦和は残り14試合でどこまで巻き返せるのか。「狙っていく」姿勢こそが、キーファクターとなる。

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