勝ち切れないレッズ、柏木陽介のジレンマ。「次の人が動いてくれない...」 (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by Getty Images

「前からはめられて、蹴らないといけないというのが、自分たちのよさを一番出せない状況になる」という柏木陽介の言葉からも、想定外の展開であったことがうかがえる。

 ハーフタイムのオリヴェイラ監督のコメントからは、浦和の本来の狙いを知ることができた。

「(前半)最後のファブリシオのシュートシーンが、我々が何をしなければいけないかを表している」

 そのシュートシーンとは、前半アデショナルタイムの場面。右サイドに流れた柏木からのパスに反応した武藤雄樹がペナルティエリア内でポストプレーをこなし、後方から走り込んできたファブリシオが決定的なシュートを放つ。相手GKの好セーブにあってゴールとはならなかったが、バイタルエリアで連動したこの決定機こそが、浦和の狙いを体現していた。

 そうした状況を、さらに作り出したかったのだろう。59分、オリヴェイラ監督はボランチの青木拓矢に代えて阿部勇樹を投入。阿部に後方でのつなぎと守備の役割を託し、柏木を前方に押し上げる。前の人数を増やし、高い位置での連動性を求めた。

 実際にそこからしばらくは、浦和の攻撃に迫力が生まれた。前で連動し、ギャップを突いて長崎ゴールに迫っていく。もっとも、その時間も長くは続かなかった。前がかりになった分、背後にスペースが生じ、そこを鈴木武蔵に突かれてこの日最大のピンチを迎える。鈴木のシュートはポストにはじかれて救われたものの、このプレーを境(さかい)に、ふたたび浦和は前に人数をかけられなくなった。

 以降は球際の攻防や、走力という部分に闘う意識は垣間見えたものの、お互いにゴールへの道程を見出すことができず、時間だけが刻々と過ぎていく。浦和はアディショナルタイムに再度猛攻を仕掛けたが、その迫力とは裏腹に決定的な場面までは作り出せず、結局ゴールが生まれないままタイムアップの笛を聞いた。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る