ネジを締め直して「原点回帰」。
広島・城福サッカーの片鱗が見えた

  • 原田大輔●取材・文 text by Harada Daisuke
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 快勝しながらも、多くの選手が最後の1失点を悔やんだように、粘り強い守備ができれば、崩れない、負けない、という自負がある。

 ただ、守備ばかりが賞賛されがちだが、攻撃も着実に進化している。そのひとつがセットプレーだ。パトリックが「チームメイトに相手選手をブロックしてもらったことでうまくいった」と、コーナーキックから決めた2点目を解説すれば、柏もセットプレーに自信をのぞかせた。

「セットプレーにはかなりの時間を費やしてトレーニングしている。相手のスキを突いたショートコーナーから(先制点となった)PKも獲得しましたし、2点目と4点目もセットプレーからですからね。練習で取り組んできたことが表れた結果だと思います」

 それとともに見られたのが、鋭いカウンターである。ふたたび柏が続ける。

「カウンターの精度も徐々に上がってきている。仕留めるところ、出ていくところ、スプリントを仕掛けるところ......迷いなくパスが出てくると思って味方を信じて走れている。ここがチャンスだという意図をみんなで共有できているから圧力をかけて走れているし、人数をかけることもできていると思います」

 前半はもちろんのこと、リードを奪った後半も再三、効果的なカウンターを仕掛けていた。突進力のあるパトリックが複数のDFを引きつけ、併走する柏や途中出場した川辺駿が決定機を迎えた。それだけではない。後半には自分たちでボールを保持してパスをつなぐと、相手陣内に攻め入るなど、城福監督が本来目指そうとしているサッカーの片鱗が見えつつある。

 そうした進化も、バージョンアップも、やはり、やるべきことが明確になっているからこそだ。ベースを見失わなければ、広島が大きく崩れることはない。ふたたび稲垣の言葉を借りる。

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