鹿島一筋12年の遠藤康。「小笠原満男の跡を継ぐイメージはないです」 (3ページ目)

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko
  • 井坂英樹●写真 photo by Isaka Hideki

  

――必要と言われているのなら、鹿島で。

「そうです。他のチームへ行って、試合に出てもなぁ......と思う頑固な自分がいましたね。『絶対に鹿島で試合に出てやる』って思っていました」

――それはクラブへの忠誠心なのでしょうか?

「忠誠心ですかね?(照れ笑)。僕は1年目でリーグ優勝を見ているので......」

――3連覇の1年目ですね。

「そうです。でも僕はその3年間ほとんど試合には出ていない。だから、優勝の瞬間をスタンドやピッチの脇で見ていたし、クラブハウスでこういう写真(集合写真)を見ると、試合に出て、僕もこの喜びを分かち合いたいという想いがずっとあったんです。だから、移籍できなかったんだと思う。選手の価値というのは、年俸や試合出場数などいろいろあると思います。でも、優勝できる、タイトルを手にできるというのもまた、本当に限られた選手だけが経験できること。鹿島を出て、そのチャンスを自ら逃すというのは、悪い選択なんじゃないのかと僕は思うんです」

――たとえ、今は苦しくても、タイトルを手にできる可能性のあるクラブにいることの意味を感じていたんですね。タイトルがチームにもたらす影響の大きさを物語るエピソードですね。

「今の若手にも当時の僕のように『鹿島で優勝を経験したい』と言っている選手はいます。そういう気持ちが成長のきっかけになる。だからこそ、僕らは優勝しなくちゃいけない。そうすれば、試合に出ていない選手が『どんなに苦しくてももっと頑張ろう』と奮起してくれると信じている」

ーーなぜ、鹿島はこれほどのタイトルを手にすることができたのでしょうか?

「勝利への執念や執着心も大事だと思うけれど、『大事なのはこれです』という答えがわかっていれば、苦労しないので(笑)。それにほかのクラブのことを僕は知らないから、比較もできないんですが、選手みんなが思っていることを言い合って、それをまとめながら、選手みんながバランスよく、自分の果たすべき役割をまっとうするというのが、勝利への近道なのかなと思います」

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