中学時代、150万円稼いだ元ヴィッセル田中英雄はJFLでも笑顔で (3ページ目)

  • 高村美砂●取材・文 text&photo by Takamura Misa

 当時、憧れたのはカズ(三浦知良/横浜FC)。カズが高校時代に単身ブラジルに渡ったというエピソードを聞いて、彼もまた、ブラジル行きを目指したほどに、だ。

「小学6年になると、サッカーどっぷりの毎日になり、僕もカズさんのようにブラジルに行ってサッカーがうまくなりたい、と思うようになりました。

 ただ、うちは母子家庭だったので『これ以上、オカンには迷惑をかけられない』と。それもあって、中学生になると同時に、毎朝登校前に新聞配達のアルバイトをするようになりました。雨の日だけはオカンに手伝ってもらいながら365日、毎日です。それを3年間続けたら、卒業時には一緒に貯めていたお年玉も含めて150万くらいになりました」

 そんな田中少年を支えてくれていたのが、地元に住む親戚や友だち、その家族や近所の人たちだ。

 のちに彼が大津高校へ進学したのも、地元にあるスポーツ店のおじさんに「熊本県には大津高校というサッカーの強豪校があるぞ」と教えられたから。大学2年のときに最愛の母を亡くした際も、いつだって地元の人たちは彼に温かく、優しく寄り添ってくれた。

 話が逸れたが、そうして幼少の頃から周囲の人たちに支えられて、自分のサッカー人生が成立してきたことをひしひしと感じているからだろう。田中は「いつか故郷の人たちに、プロサッカー選手としてプレーする姿を見てもらいたい」と思いを馳せる。

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