レノファ山口をJ1に導くか。「ハリルを連れてきた男」の巧みな手腕 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Getty Images

「ひっくり返す力が、まだまだ足りない」

 霜田監督がそう振り返った第12節、敵地でのヴァンフォーレ甲府戦も、昨季までJ1だった格上を相手に堂々と渡り合った。一度はリードされるも、終盤に同点に追いつき、さらには勝利を狙っている。

その采配には迷いがない。次々にシステムを変え、攻撃のカードを切った。最後はDFの坪井慶介を下げ、FWの岸田和人を入れ、2-4-4のような極端に攻撃的な布陣を敷いた。そしてFKから同点弾を叩き込んだ。

 もっとも、やみくもに勝ちにいったわけではない。

「相手がFWを下げ、DFを入れて、守りに入ったから」

 霜田監督は淡々と説明する。リスクはあったものの、勝算は十分にあった。試合の流れを読み、手札を切る。それは優れた交渉人だった霜田監督の真骨頂と言えるだろうか。

 ではザッケローニ、アギーレ、ハリルホジッチという監督から学び取った経験はどう生かされているのか?

「(システムなどはその3人の)誰にも似てないかもね。でも、(彼らと仕事する中で)日本人選手は、下がったらやられる、というのは学んだ。だからセンターバックにはラインを高く取るように言っているし、下がらないように、と。選手はそのなかで変わりつつはあるよ」

 そう語る霜田監督は、選手の殻をも破らせつつある。例えば浦和レッズで1試合出場と燻(くすぶ)っていたオナイウ阿道(あど)はすでに6得点。同僚の小野瀬康介とともに得点ランキングトップに並ぶ。

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