「ジーコの負けず嫌いはハンパなかった」。本田泰人はその魂を継いだ (4ページ目)

  • 寺野典子●文 text by Terano Noriko  井坂英樹●写真 photo by Isaka Hideki

    「はい、あの遠征が非常に大きかったと思います。あそこでチームとしての戦術を徹底的にトレーニングしたんです。初戦はセリエCのクラブとやって引き分けられたけれど、続くクロアチア代表戦には1-8と大敗。激怒するジーコの姿は今でも思い出せます。

 翌日からはとにかく守備練習。4バックとアンカーの僕の5人で、カウンターを受けた形をひとつひとつ整理していくんです。もうヘトヘトでしたね。何度も何度も繰り返し、ゼーゼー言いながら(笑)。いつ終わるともわからない。翌日もまた同じ。どんどん疲労もたまりました。僕のキャリアのなかでも一番キツイ練習でした」

――その成果がインテルとの練習試合でドローという結果に繋がりましたね。

「向こうはトップチームだったから自信になりますね。そういうクラブと(練習試合を)セッティングできるのもジーコだからこそ。オフの日にミラノ観光していたら、(パオロ・)マルディーニ()が声をかけてくれたんですよ。『君たちはジーコのクラブの選手か?』って。いっしょに写真まで撮ってもらった。本当に自分たちが恵まれた環境なんだ、ジーコとチームメイトなんだと実感しましたね」
※ACミラン、イタリア代表で活躍したディフェンダー。「史上最高の左サイドバック」と評された

――インテル戦の結果に対して、ジーコはどんな反応だったのでしょうか?

「褒めてもらえた。ジーコはね、いいと思ったこと、頑張ったことに対しては、すごく褒めてくれるんですよ。『お前、できるじゃないか!』って。これはよく話す話ですが、ショートパスのミスに対してはメチャクチャ怒るんだけど、ミドルパスやロングパス、チャンレジしたパスに対するミスについては、『問題ない。よいチャレンジだ』と言ってくれる。そういう人なんです」

――ジーコのハットトリックもあり、開幕戦(1993年5月16日、対名古屋グランパス)を5-0で勝利したアントラーズは、そのままファーストステージ優勝を果たします。

「あの開幕戦は僕にとっても思い出深い一戦です。初戦を勝てたことでの安堵感が生まれたし、勢いがついたのは間違いないですから」

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