「断トツの降格候補」ではなかったV・ファーレン長崎、大健闘のわけ (3ページ目)

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 しかし、だからと言って、どんなチームが相手でも得点できると自信満々に言えるほど、圧倒的な力を保持しているわけでもない。

 ならば、限られた手持ちの武器を"いかに強力に見せ、相手に脅威を与えるか"。それが勝負のカギとなる。

 J1初昇格の長崎、つまりは対戦時に勝ち点3を確実に稼いでおきたいチームを相手に、0-0の時間が長く続けば、対戦相手には多少なりとも焦燥感が生まれる。だからこそ、選手たちは「0-0の状態を長く続けることが重要」だと口をそろえるのである。高木監督も「もし0-0で、後半のあの(長崎が攻勢の)展開になっていれば、もっと鹿島はビビったはず」と振り返る。

 シーズン全体のおよそ3分の1に当たる第12節を終え、長崎は勝ち点14で14位につけている。開幕前は断然の降格候補と目されていたことを考えれば、大健闘と言っていい。新米J1クラブでは貴重な、100試合を超えるJ1出場経験を持つ徳重は言う。

「初めてのJ1でスピードや技術の違いを見せつけられると、選手一人ひとりが自分だけ置き去りにされているような孤独感を覚えてしまうことがある。でも、自分たちは常にチームで戦っている。そういう気持ちや雰囲気を作っていきたい」

 身の丈に合った戦いができているのは言うまでもないが、その身の丈は意外なほど高く、しかも、実際の身の丈以上に大きく見せる術(すべ)も心得ている。

 長崎、大健闘の理由である。

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