トンデモ暴力事件の陰で、名波ジュビロは理想的なサッカーをしていた (3ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

 パスを回しながら隙を探り、ボールサイドに人数をかけて攻め込んでくる横浜FMは、まさに名波監督が取り組んできた対戦相手のイメージそのものだった。だからこそ、特別な策を講じなくとも、普段通りの戦いで結果を生み出せたのだ。

 先制点を決めた松浦も、同様の意見を口にする。

「相手を分析したというより、チームとしてやるべきことをやっただけ。中(のエリア)を締めること、前から行くこと、チャンスがあればアグレッシブに行くことは、どの試合でもジュビロが目指していること。相手がマリノスだからって、特別なことはないですね。それをチームとしてやれたというのはよかったと思います」

 多くの主力を故障で欠くなかで、このクオリティを保てたのも、横浜FM戦での大きな成果だろう。MF中村俊輔という稀代のアーティストを擁する磐田だが、その特長は攻撃ではなく、組織的でオートマティックな守備であり、4年かけて積み上げてきた継続性こそが、なによりこのチームの強みである。

 名波監督が就任したのは、J2での戦いを余儀なくされた2014シーズンの途中から。同年は4位と昇格を逃したものの、2015年にJ1昇格を実現し、J1復帰1年目となった2016年は年間13位。そして昨季は6位と躍進を遂げ、その成績からも着実な上積みが感じられる。

 そして2018年、開幕前の目標は「トップ5」である。現在は6位だが、優れた指導力と求心力を備える指揮官のもと、その組織力にさらなる上積みが見込まれれば、目標は上方修正されることになるかもしれない。

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