豊田陽平も「荒いけど強い韓国リーグ」を実感。ACLで日本勢の上へ (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by YUTAKA/AFLO SPORTS

 蔚山は前線が圧力を増し、全体が押し上げ、川崎Fを敵陣に封じ込める。後半2分に右CKを得ると、エリア内で2度のヘディングで競り勝ち、あっさりと1点差に詰め寄った。高さ、強さを最大限に行使している。

 豊田も献身的に裏に抜け出し、クロスのポジションを取ることで川崎Fのラインを下げた。そして後半5分、右サイドからのクロスがエリア内から弾き出されたところだった。左サイドのイ・ヨンジェがこぼれを拾い、左足で逆サイドに突き刺した。

「監督からは、『(センターフォワードとして)センターバックのところで戦え。背後に(入るボールを狙って)出ろ。中盤に落ちてくるな』と言われます」

 豊田はその役割を説明している。

「(蔚山の)攻撃は両サイドの"槍の選手"(サイドを駆け上がる走力のある選手)を使う感じで、そこからのクロスに合わせられるか、というのが徹底的に求められます。ボールを受けたらサイドチェンジを使って、槍の選手がクロスを前線に上げ、たとえ合わなくても、それをとにかく繰り返す。中盤で気の利いたパスが入ることとかはほとんどないですが、このやり方で点が入っちゃう部分もあって」

 川崎F戦、蔚山は先手を取れるようになると、サイドチェンジも入るようになった。各選手の立ち位置は悪いままだったが、押し込んでしまえば、その野放図さは目立たない。クロスに対して飛び込む強度は高く、むしろ荒々しさが際立つようになった。

<フィジカルと闘争心>

 そのふたつを軸にプレーを旋回させられるのが、今も昔も韓国サッカーなのだろう。論理的アプローチは乏しく、攻撃も守備も単調だ。だが、強さ、激しさで足りないものを補い、アジアレベルでは相手を凌駕できる。事実、ACLグループリーグで川崎Fは勝ち点3で敗れ去り、蔚山は勝ち点9で勝ち上がっているのだ。

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