奇跡の天皇杯優勝。「フリューゲルスが理想のチーム」と三浦淳寛は言う (5ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 その力を出せたのは、優勝すればチームが存続できると思っていたからだと思います。でも実際は、優勝したときにはみんな、すでに行き先が決まっていた。優勝して(吸収合併が)撤回されても、その契約はナシってことにはならない。結果的に、僕らは何もできなかった。『これで本当に終わりなんだな』って思うと、これまでのいろいろな思いが込み上げてきて、泣けました」

 ピッチ上では、多くの選手が涙を流していた。国立競技場のスタンドに陣取っていたフリューゲルスサポーターの多くも涙した。そして彼らは、最後のセレモニーを寂しげな表情で見つめていた。

 2018年、フリューゲルスが消滅して20年という節目の年を迎えた。

 三浦は、天皇杯の優勝は「奇跡」と言った。

「あんな異常な状況で、あんな最低なコンディションで試合をしたら、普通はもっと早く負けていますよ。そんな状態でも勝ち続け、ジュビロやアントラーズに勝って、優勝した。あれは、奇跡。まさに『スクールウォーズ』の世界だと思います」

 自由で開放的で、アットホームなチームだった当時のつながりは今、"フリューゲルスLINE"という形で続いている。選手はもちろん、スタッフやフロントの人間も入って、やりとりしているという。サンパイオが日本に来たときは、当時のキャプテン山口素弘が中心となり、そのLINEで「みんなで集まろう」という連絡が回ってきた。

 フリューゲルスというチームはなくなり、当時の選手の多くはすでに現役を引退した。だが、今もそのチームに所属していたことを誇りとして、その名前を意識的に残している現役選手がいる。

 名古屋グランパスのGK楢崎正剛である。グランパスに移籍後も、彼の前所属は「横浜フリューゲルス」のまま変わっていない。

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