奇跡の天皇杯優勝。「フリューゲルスが理想のチーム」と三浦淳寛は言う (3ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「声をかけてもらってありがたかったんですけど、ライバルチームに行くことに抵抗があったし、そもそもフリューゲルスを吸収するチームに行くべきなのか、という葛藤が自分の中にあった。マリノスでやっていけるのか、なかなか決心がつかずにいた。

 でも、これ以上(契約を)引き延ばすと、そのオファー自体がなくなるし、僕らがマリノスに行けば、フリューゲルスの"F"は残る。いろいろ考えて悩んだ末に、他の選手たちも移籍先が決まっていくのを見て、ようやくサインすることにしました」

 契約交渉の席で、マリノス側の担当者から「紳士たれ」として、ピアスや茶髪は禁止だと言われた。厳格なルールを強いられたことに、自由な雰囲気の中でプレーしてきた三浦は、それがフリューゲルスでやってきた自分たちへのあてつけのように聞こえた。

 若く、血気盛んだった三浦は猛然と言い返した。

「じゃあ、黒髪にしてピアスを外したら、サッカーがうまくなるんですか」

 マリノスに移籍後、最初のファン感謝デーに参加した三浦は、ダイヤモンドのピアスをつけて登場したのである。

 ちなみに、マリノスに行ったフリューゲルスの選手たちは、冷たい仕打ちを受けたという。フリューゲルスのサポーターからは「裏切り者」と呼ばれ、マリノスのサポーターからは「おまえらなんて応援しない」と言われた。両者の憎しみを背負った三浦は、結果を出して両方に認めてもらうしかないという決意で、1年目は黙々とプレーしていた――。

 最後の天皇杯。フリューゲルスは準々決勝でジュビロ磐田と戦った。前年の年間王者で、その年のファーストステージ覇者である。劣勢が予想されたが、2-1で勝利した。

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