アントラーズがゴール欠乏症をこじらせて、「常勝メンタル欠乏症」に (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 形自体は幸運だったが、レアンドロの果敢な仕掛けがFC東京の守備網に隙を生み出したのは間違いなかった。直後にもレアンドロは同様のプレーを見せ、攻め上がった西もサイドではなく中央でボールを呼び込むなど、得点力不足に悩まされていた鹿島がその課題を解消するきっかけを掴んだかと思われた。

 ところが、そうした意識が見られたのは、この時間帯だけ。39分にオウンゴールで同点とされると、後半はふたたびサイド攻撃に偏り、その迫力は消え失せていた。

 55分に、この日切れ味抜群のパフォーマンスを見せていたDF室屋成に豪快な一撃を叩き込まれて逆転を許した鹿島は、その後大した反攻を見せることなく、1-2と敗れている。これで鹿島は早くも3敗目を喫し、13位に転落。総得点4は、ジュビロ磐田と並んでリーグ最少の数字である。

 面白いデータがある。このFC東京戦を含め、今季喫した3敗で鹿島はいずれも60%近いボール支配率を記録していた。逆に今季挙げた2勝はともに、ボール支配率で相手よりも劣っているのだ。

 もちろん、負けている展開では攻勢を強め、ボール支配率が高まるのはある意味で当然の傾向ではあるものの、川崎フロンターレのようにポゼッションで勝(まさ)り、結果を手にするチームもある。ましてやこの日の鹿島は、スコアが動いていない時間帯からボール支配で明らかにFC東京を上回っていた。

 つまり、得点状況にかかわらず鹿島にはボール保持の時間を長くし、相手を押し込みたいという意図があった。しかし、そのボール支配がチャンスの数には結びつかない。西も「あまり効果的な回し方じゃなかったかなと思います」と、うまくいかなかったことを認めている。

 2016年に優勝を成し遂げた当時の鹿島の戦いを振り返ると、ポゼッション率で相手を下回る試合が多かった。高い位置から奪いにいく能動的な守備で相手のミスを誘い、素早いショートカウンターからゴールを陥れる。そんな戦い方がうまくハマり、栄冠を掴んでいる。

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