ブーイングのなか「遺恨対決」。
齋藤学の復帰が川崎Fにもたらすもの

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 川崎Fは中村憲剛を中心に、コンビネーションを使った丹念な攻撃で、受け身になった横浜FMを攻め立てた。家長昭博が右サイドで幅を作って、エリア内に入った中村が合わせる。中村の自陣からのロングスルーパスを受けた知念慶が右足で狙うが、これはニアのポストを叩く。中村が密集でボールを受けると、左サイドでフリーになっていた阿部浩之に展開し、クロスを折り返して家長が飛び込むも、枠を外れた。

 川崎Fは中村を軸にしたプレーメイキングによって、いくつもチャンスを作った。ボールを握る強度で、完全に横浜FMを上回る。しかし、前半だけで10本のシュートを打ちながら、無得点に終わっている。

「前半から飛ばしていって、推進力というか、圧力というか、プレーにパワーを使った。それで点が取れなかったので、最後に疲労がくることは予想していた」(川崎F・鬼木達監督)

 後半、川崎Fは攻め疲れの様相が強くなる。横浜FMは背水の陣を敷くように、決死の高いハイラインで、サイドバックがインサイドでプレー。GK飯倉大樹はディフェンダー同然のポジションをとった。これに川崎Fの自慢のパスワークが封じられ、ボールのイニシアチブまで与えてしまった。

 完全にガス欠の状態だったが、川崎Fは地力を見せる。58分、大島僚太がバックラインの前でターンし、右サイドの阿部にパスを通し、折り返したクロスを家長が左足で叩く。ボールはポストに当たるが、跳ね返りがGKの顔面に当たってゴール。帳尻を合わせたように見えた。

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